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未来を拓け!国税庁主催【日本ワインシンポジウム】

国税庁主催の「日本ワインシンポジウム」が、東京・品川区で3月8日、日本ワインの生産者を始め、ワインの愛好家がおよそ400人集まり行われました。
国税庁は昨年10月、国産ブドウのみを原料としたものを「日本ワイン」とする表示ルールを決めました。今回のシンポジウムは2年後から運用を前に、日本ワインのブランド価値の向上、海外輸出の促進を目指す取組の一環でした。

はじめに、国税庁長官の中原宏氏より「日本ワイン」の定義が説明されました。従来は国産ぶどう以外の原料(輸入濃縮果汁、輸入ワイン、海外原料などを使用したワインなど)にも「国産ワイン」と表示しており、区別がつきにくいことが問題となっていましたが、その区別を明確に、日本ワインに限り、産地名、ブドウ品種、収穫年を、一定のルールに基づいて、ラベルに表示できることについての確認がありました。

次に国税庁課税部 宇都宮仁氏(鑑定企画官)から、日本ワインへの注目が国内外で集まっていることへの紹介がありました。一方で課題にも触れて、「ワイナリーとブドウ農家の分業」「醸造用ブドウ栽培とワイン醸造の歴史の短さ」「醸造用ブドウの不足」「コスト高」「新規参入者への支援が必要」を指摘されました。

基調講演には、世界のワインの最高峰資格「マスター・オブ・ワイン」に日本在住の日本人として初めて認定された、大橋健一氏(株式会社山仁酒店 代表取締役社長)が壇上に立ちました。お酒を流通する立場からマスター・オブ・ワインを取得することで、世界でも自分の発言が注目される様になったと振り返り、世界から見たワイン市場の中で日本ワインの戦略を立てることの大切を強調されました。特に「Reliability(高い信頼性の確保)」「Absolute value(絶対価値)」「Sales increase(売上向上)」の3つをしっかり理解することを熱っぽく語りました。結びとして、「A lot of positive factors(多くの長所)」と、「Need to know by ourselves!(自分を知る必要性)」という言葉で、日本ワインについて、自分からの理解して、良いところ(と悪いところ)を堂々と国内国外に示していこうと説かれました。

俳優の辰巳琢郎氏やワインの製造者によるパネルディスカッションでは、ブランド価値向上のために「輸入ワインとの差別化」「地域のワイン、ワイナリーでの催し」を強化して、「日本人が普通に食べる食事に合うワイン、日本に合ったワインと自信を持って世界へ輸出できる様になろう」などと言う意見が出されました。

最後に、石井もと子氏(日本ワイナリー協会理事)より日本ワインの産地、生産者について、特に北海道、長野、山梨、山形を中心に紹介がありました。ジャンシス・ロビンソン氏の言葉を借りて「この10年は過去40年に最も急激に変化した10年」として、この5年も約40のワイナリーが新設される等、日本ワインが世界の中でもユニークな発展と、その途上にある事例が多数紹介されました。

会場では全国70のワイナリーで造られた日本ワインの試飲会も行われ、参加者は産地ごとに異なる味や香りを楽しみました。北海道余市にあるドメーヌタカヒコの曽我貴彦さんに話を伺ったところ、「2010年から東京ドーム1個分の敷地でピロノワールだけを栽培し、ブドウの生産からワインの醸造までを家族経営でされている」そうです。こうした新規参入の方は多く、余市でも「移住以前2件だったのが、現在11件に増え、今後5件増える」とのことです。試飲会場では、そのこだわりを知るワイン愛好家の長蛇の列が伸び、その人気ぶりを垣間見ると同時に、日本ワインの未来に光明が射すのを感じました。

日本国内で1年間に流通するワインの内訳(4177万ケース、2014年)を調べると、輸入ワイン:国内製造ワイン:日本ワイン=70:26:4となり、実は国内で流通するおよそ30%は国内で製造された「国産ワイン」ですが、ほとんどが原料に輸入されたブドウが含まれていて、日本で収穫されたブドウだけでつくられたものはわずか4%しかありません。ワインの文化が根づくヨーロッパに倣い、産地にこだわった「日本ワイン」と言う定義を明確化することは、ブランド化への大きな前進となることでしょう。
日本ワインが始まって140年、ここ10~20年で確実に質を上げて、さらに新規参入組も加わり、未来を拓く坂の途上にあります。孫の代まで日本ワインがさらに改良を重ねていく視点で、その他のワインとの違いや特徴を伝え、一過性のブームではなく、良質なファン作りに貢献すべく、メディアとしてのその役割を担いたいと、今回のシンポジウムに参加して改めてそう思いました。

日時:平成28年3月8日(火)13時から17時
場所:品川グランドセントラルタワー 3F THE GRAND HALL
(東京都港区港南2-16-4)
内容
・基調講演
大橋健一氏(マスター・オブ・ワイン)
・パネルディスカッション
モデレーター 後藤 奈美氏(酒類総合研究所理事)
パネリスト 大橋 健一氏(マスター・オブ・ワイン)
小畑 暁氏(都農ワイン・宮崎)
齋藤 浩氏(山梨県ワイン酒造組合会長)
酒井 一平氏(酒井ワイナリー・山形)
曽我 貴彦氏(ドメーヌタカヒコ・北海道)
辰巳 琢郎氏(俳優)
塚原 嘉章氏(長野県ワイン協会理事長)
(五十音順)
・日本ワインの紹介
石井もと子氏(日本ワイナリー協会顧問)
・日本ワインの展示・試飲
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/event/index.htm

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酒蔵プレス編集部

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