伝統を守り継ぐ一方で、秋田の酒造りは進化を止めていません。
第2部では、高度な醸造技術と知恵で新たな日本酒の可能性を切り拓く大仙市の3蔵と、名水百選の郷・美郷町で唯一無二の旨味を創り出す1蔵の魅力に迫ります。
3. 出羽鶴酒造(秋田県大仙市)
~「和醸良酒」を掲げ、風土と技術の進化を止めてない蔵~
会社名:出羽鶴酒造株式会社
創業年:1865年(慶応元年)
代表銘柄:出羽鶴(でわつる)、やまとしずく
住所:秋田県大仙市南外字悪戸野81
公式サイト:https://www.igeta.jp/dewatsuru/

大曲の花火のオフィシャルスポンサーとしても地域に深く貢献している酒蔵です。
前身である「ヤマト酒造店」から歴史を紡ぎ、刈穂酒造とともに秋田清酒の理念「和醸良酒」を体現しています。
地元・大仙市南楢岡の自然と共生し、蔵人自らが栽培する契約栽培米「美山錦」や、約1500万年前の地層から湧き出る清らかな仕込み水を用いて醸されます。

代表銘柄の「出羽鶴」は出荷の多くを地元が占め、地域の日常や食卓に欠かせない地酒として深く愛され続けています。
一方、特約店限定銘柄「やまとしずく」は、低温長期発酵の生酛仕込みによる純米酒や、秋田酵母No.12の華やかな香りと涼しげで澄んだ酸味が美しく調和する純米吟醸など、和洋問わず料理を引き立てる食中酒として絶大な人気を博しています。


酒造りの要である杜氏・佐々木亮博氏の卓越した手腕と感性は見事で、新酒のフレッシュさを保つ全量瓶火入れ・瓶貯蔵の徹底や、白麹仕込みへの挑戦、地元産梅を用いたこだわりの梅酒(人気のため品切れ必至)など、人員や環境の変化を知恵と高度な技術で乗り越え、年々その品質を進化させています。

4. 金紋秋田酒造(秋田県大仙市)
~世界が認めた熟成古酒のパイオニア~
会社名:金紋秋田酒造株式会社
創業年:1939年(昭和14年)
代表銘柄:熟成古酒 山吹(やまぶき)、X3(エックススリー)
住所:秋田県大仙市藤木字西八圭34-2
公式サイト:https://kinmon-akita.com/

日本酒の「熟成」に情熱を注ぎ、世界的な評価を確立したパイオニアです。
世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2009」SAKE部門において、「熟成古酒 山吹1995」が最高賞「チャンピオン・サケ」を受賞。
新酒のフレッシュさが尊ばれていた当時の日本酒界において、長期熟成による深い琥珀色の古酒が頂点に立った出来事は、国内外に大きな衝撃を与えました。


その背景には、熟成古酒研究の祖である酒蔵コンサルタント・本郷信郎氏との歩みがあります。
常温で重厚なコクと香りを育てる「濃熟型」から、低温で透明感を保ちながら寝かせる「淡熟型(白の熟成)」まで、体系化された理論に基づく緻密な酒造りを実践。
通常の3倍の米麹を使用して圧倒的な旨味を引き出した「X3」シリーズなど、日本酒の既成概念を広げるプレミアムなヴィンテージ酒を世に送り出してきました。

現在では都市圏のプレミアムレストランや名店でも採用され、感度の高いソムリエやシェフから絶大な評価を獲得。
さらに近年は、オーク樽や桜樽、栗樽などを用いた多彩な樽熟成酒の醸造にも果敢に挑んでおり、日本酒の熟成文化を次のステージへと押し上げる蔵として、今後の展開にも大きな期待が寄せられています。
5. 福乃友酒造(秋田県大仙市)
~「飲む人に福をもたらす」実直な旨味の手造り蔵~
会社名:福乃友酒造株式会社
創業年:1913年(大正2年)
代表銘柄:福乃友(ふくのとも)、冬樹(ふゆき)
住所:秋田県大仙市神宮寺字本郷野82-6
公式サイト:http://www.fukunotomo.com/aboutus.html

初代当主・福田秀一と杜氏・高橋友五郎の名から一文字ずつ取って命名された、地域に深く根ざす手造り蔵です。
「飲む人に福をもたらす友のような酒」を信条に掲げ、豪雪に包まれる秋田の冬、地下深くから汲み上げるやわらかな伏流水と良質な秋田県産米を用い、低温長期発酵でじっくりと醸しています。


IWCをはじめ国内外の鑑評会でも高い評価を獲得しており、地元食用米の旨味を最大限に引き出した無濾過原酒「冬樹」や、かつては蔵人しか味わえなかった搾りたてを商品化した「蔵内原酒」など、派手さよりも実直な旨味と飲みごたえを追求した酒質が大きな魅力です。


蔵内には歴史を物語る昔ながらの螺旋階段や趣ある部屋、貴重な品々が今なお受け継がれ、職人たちの息遣いと伝統を肌で感じられます。
その一方で、酒造りの心臓部である製造現場は隅々まで美しく整理整頓が行き届いており、日々の徹底した清掃と衛生管理が、誠実で濁りのない酒質をしっかりと下支えしています。
6. 栗林酒造店(秋田県仙北郡美郷町)
~名水の郷・六郷の清らかな水が生む透明感~
会社名:合名会社栗林酒造店
創業年:1874年(明治7年)
代表銘柄:春霞(はるかすみ)、栗林(りつりん)
住所:秋田県仙北郡美郷町六郷字米町56
公式サイト:https://harukasumi.com/

町内に114カ所もの湧水群が点在し、名水百選にも選ばれた「名水の郷・六郷」に位置する美郷町唯一の酒蔵です。かつて佐竹公の隠居の地としても栄えた歴史ある地で、豊富な天然地下水を仕込み水に使用しています。


趣深い歴史を感じさせる建物の内部は、作業場から通路に至るまで徹底して整理整頓が行き届いており、日々の丁寧な清掃と規律が実直な酒造りを支えています。
原料米には美郷町発祥の酒造好適米「美郷錦」をはじめ、契約栽培された良質な米を厳選。
人と自然が調和した清らかな水環境そのものを瓶に詰め込んだような、透明感あふれるモダンな酒質設計は、全国の日本酒通の間で高い人気を誇ります。


代表銘柄である「春霞」や「栗林」は、六郷のやわらかな水に由来する優しい旨味と上品な酸味が美しく調和し、現代の多様な食事を引き立てる上質な食中酒として絶大な支持を獲得。
さらに、火入れを行っていながらも心地よい微細なガス感とフレッシュでフルーティな飲み口を保つ一本など、緻密な醸造技術と温度管理に裏打ちされた革新的な美酒を展開しています。
【次回予告】
最終回となる第3部では、仙北エリアを象徴する国内最高峰の花火大会「大曲の花火」の迫力に迫るとともに、旅先で出会う「地元の日常酒」の真の豊かさについて総括します。
▼第1部はこちらから
https://www.sakagura-press.com/sake/akita_sake012026/
IWCなどの世界で評価される酒蔵や、秋田の地だからこその米、名水、風土を生かした酒蔵など、それぞれの特色を肌で感じる訪問となりました。
https://www.sakagura-press.com/