世界遺産登録を機に空前の和食ブームが広がり、日本酒が世界各国でスポットを浴びるようになった。そして、利き酒酒師という日本発祥の資格が世界にも広がりをみせており、世界コンクールも開かれている。世界的な和食ブームとともに海を越えた、国際利き酒という資格の実態を探った。
和食とともに高まる日本酒への関心
利き酒師とは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会(SSI)が認定する日本酒のソムリエともといえる資格。日本酒に関する基礎知識はもちろんのこと、テイスティング、料理やシーンに合わせたサービスなど、日本酒を総合的に評価できる専門知識をもった人が認定される。飲食や酒販に携わる人だけでなく、日本酒ファンの間にも有資格者は少なくない。
これまでも、利き酒師という資格に関心をもつ外国人は決して少なくなかったが、取得するには日本へ来て日本語で受験しなければならず、敷居は高かった。そんな中、SSIは諸外国で日本酒の適正な知識を啓蒙普及することを目的に、2013年7月に国際利き酒師の認定制度を発足。外国人にも門戸を開いた。
認定試験は、英語、中国語で添削する通信コースと、現地語での筆記試験と実技試験が含まれる受験コースの2種類がある。受験コースは韓国やシンガポール、ロンドン、台湾、米国で行われた。現在までの合格者は計300人を超え、なかでも韓国語の合格者は200人余りで全体の7割近くを占めるという。今後、他国での開催も検討しているようだ。 また、酒類・食品の総合的な知識やサービス技術力を競う世界コンクールも開催している。
「利き酒師」の資格を目指す理由とは
国際利き酒師たちが資格を取得しようとする動機は、「勤務する和食店で日本酒を扱っているから」、「流通業で日本酒を扱う機会が増えたから」といった自身の仕事に関わる内容が多いという。実際、取得者は飲食店でのサービスやアルコール輸入業者としての仕事の場で、その能力を発揮している。
しかし、日本と諸外国では日本酒を取り巻く環境は異なる。海外における日本酒はワインやビールのように身近でカジュアルなものではなく、ある程度の富裕層が嗜む高級なアルコール飲料として位置づけられている。また、例えばアメリカでは「ライスワイン」と称され親しまれている通り、米本来の旨みを感じるどっしりした飲み口のものよりも、軽やかでフルーティな吟醸系のものが好まれているというように、国、地域により好みが違う。 そのため国際利き酒師は、単に日本酒に関する専門知識を得るだけでなく、国ごとの嗜好、市場実態、文化、風習などに合わせた日本酒の楽しみ方を紹介しているという。
海外では、そんな利き酒師とタッグを組んで日本酒や和食をプロモーションする現地企業も出てきているという。既に海外展開しているところはもちろん、今後展開を模索している日本の飲食企業にとっても、現地と日本酒の架け橋となる国際利き酒師との関係性は一つのカギとなりそうだ。