地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第46回目の当記事では、滋賀県甲賀市(しがけんこうかし)の藤本酒造(ふじもとしゅぞう)株式会社を特集します。
神様のお告げにより出来た清酒「神開(しんかい)」
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
当酒蔵は滋賀県と三重県との県境に位置し、甲賀忍者(こうかにんじゃ)の里として知られる甲賀市(こうかし)にあります。
その昔、明和元年(1763)ごろより、先祖が「宝一」の名で清酒を造っておりましたが、あまり酒質が良くなく困り果て、当地の「山村神社」のご神託を奉じて井戸を掘りましたところ、鉄分が極端に少なく、ミネラル分を多く含んだ最上の名水が湧き出しました。
当蔵では現在に至るまで、変わらずこの清冽な水を仕込水として使用し、上質な酒を醸しています。 米どころ近江米と相まって醸された清酒が大変美味しかったので酒名を 「宝一」より「神開(しんかい)」〜神様のお告げにより出来た清酒〜と名付けて現在に至っています。
―代表銘柄は?
神開 特別純米 大自然 しんかい
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
「神開 純米原酒 水もと」です。
上立ち香のはっきりとした乳酸香に、少し加わる麹由来の甘い香りがします。口に含むと、まず感じる乳酸菌飲料のような元気な乳酸味・デラウエアのような嫌みのない甘みと瑞々しさが加わりとてもジューシーな印象になります。
合わせるのは鮒(ふな)寿司です。琵琶湖でとれるニゴロブナを塩漬けにしたのち、炊いた米に漬け込み乳酸発酵させた、まさしく滋賀県民のソウルフードです。ともに米と乳酸菌が深くかかわる発酵食材ですので相性はバツグンです。心地よい香りと程良く熟した柔らかい旨味を、軽く冷やしてお楽しみくださいませ。
それぞれのお米の性格を素直に表現した酒造り
―酒造りで心がけていることは?
当蔵は「地の恵み」を大切に、滋賀県産米の山田錦・吟吹雪・玉栄・日本晴を中心に使用しています。
清酒は農産物という観点から、近年は契約農家様と話しながら、より力強いお米を育て、清酒を醸すことに注力しております。山田錦は堂々と、吟吹雪は包み込むようにやさしく、玉栄は力強く硬派に日本晴は人懐っこくカジュアルに…それぞれのお米の性格を素直に表現した酒造りを目指しています。
また、「和醸良酒」(働く蔵人の和があれば、自然と良い酒が醸し出せるという当蔵創業者の理念)のもと、チームワークを重視し、円滑な人間関係を築くということを常に念頭に置いて従業員全員が妥協なく日々精進しております。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
当酒蔵のある甲賀市は、中世に活躍したといわれる甲賀忍者衆が世界的に有名です。市内にはそんな忍者の忍術を体験できる施設があります。
また信楽町は信楽焼が有名で、日本六古窯に数えられるほど長い歴史を持ち、連続テレビ小説「スカーレット」の舞台となりました。また街中のいたるところに大小様々なタヌキの置物が並び、特に信楽(しがら)駅前の超巨大なタヌキは壮観です。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
毎度、当酒蔵の清酒・リキュールをご愛飲いただき誠にありがとうございます。
当酒蔵は滋賀県甲賀市で、「和醸良酒」(働く人の和があれば、自然と良い酒ができるという創業者の理念)のもと、チームワークを重視し円滑な人間関係を築くということを常に念頭において清酒・リキュール製造業を営んでいます。
また、ただ酔うためではなくじっくり味わっていただくための技術の習得や商品開発、さらに、当社の商品が明日の活力の源となり、ひとりでも多くのお客様の心の支えになっていただけたらと考えております。
努力してもいい酒ができるとは限りませんが、いいお酒を造っておられる蔵元は、必ず努力していると思います。
最高の酒を皆様にお届けするため精進してまいります。
今回ご紹介した酒蔵について
【滋賀県】
藤本酒造株式会社
http://f-shinkai.com/
滋賀県甲賀市水口町伴中山696