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バランスよくどんな料理にも合う「食中酒」を追求し、進化を続ける創業300年以上の酒蔵 【七冠馬】簸上清酒‐島根県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第250回目の当記事では、島根県奥出雲町(おくいずもちょう)の簸上清酒(ひかみせいしゅ)を特集します。

泡無酵母の原種を発見した蔵

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

当蔵は1700年代前半(正徳年間)に島根県・奥出雲で創業しました。長い歴史の中で数度火災に見舞われ正確な記録が消失しましたが、同じ郡内には当蔵含め5軒の酒蔵があったといわれ、古くから酒造りが盛んな地域であったことが伺えます。

1910年に町内の3軒の酒蔵が合併し、現在の「簸上清酒合名会社」となりました。1960年代には泡無酵母の原種を発見し、現在では全国の酒蔵が酒造りに使用しています。

―代表銘柄は?

代表銘柄は「七冠馬」です。

20世紀最強と称される競走馬・シンボリルドルフに由来する日本酒です。シンボリルドルフが有馬記念を連覇し史上初めての七冠馬が誕生した直後に、シンボリ牧場のオーナーである和田家と簸上清酒蔵元の田村家が縁結びの国・島根で結ばれ、親戚の関係になったことがきっかけです。この数奇な運命の巡り合わせによって、ルドルフが七冠を達成してから10年後の1996年に銘酒『七冠馬』が誕生しました。

「七冠馬」の特徴は、料理を邪魔しないきれいな香りと食事の主役になる旨味、他の料理を引き立てるすっきりとした後味を兼ね備えていることです。出雲杜氏の技によって生み出される安定した酒質は、温度を上げて燗酒で飲んでもへこたれず、しっかりとした味わいです。

様々なバリエーションのお酒は広島国税局清酒鑑評会や全国燗酒コンテスト、ヨーロッパや香港のコンペティションでも受賞歴があります。

―イチオシ商品はなんですか? 

「七冠馬 純米大吟醸」

爽やかなマスカット系の香りとほのかな甘みが楽しめる純米大吟醸です。

使用する酒米「佐香錦」は、島根県が開発したオリジナルの酒造好適米です。その名前は、出雲市にある酒造りの神様「久斯之神(くすのかみ)」を祀る「佐香神社」に由来します。
日本酒発祥の地と言われ、この「佐香」という言葉は「酒」の語源とも言われています。

この「佐香錦」を、厳選し時間をかけて丁寧に磨き、醸しました。フルーティでありながらすっきりとした味わいは白ワインを彷彿とさせ、日本酒にあまりなじみのない方でも美味しく飲んでいただけます。

お薦めの飲み方&ペアリング:香りを楽しみながらすっきりと飲めるように冷酒がおすすめです。刺身などの王道の料理はもちろん、魚介のカルパッチョなど洋風のテイストも相性がいいと思います。

「食中酒に最適」を目指す味わい

―酒造りで心がけていることは?

当蔵の酒造りは、ほどよい香り、まろやかな旨味、しっかりとした後ギレの良さを兼ね備え、食事の主役にも料理の引き立て役にもなる、料理と調和するバランスの取れた味わいを目指しています。

当蔵が大切にしているのは、長年愛してくださるお客様のために、300年以上にわたり受け継がれているその味わいを守り続けること。その変わらない味わいを実現するために、変わっていくことが大切だと考えています。

その一環として、醪の仕込みにおいて新たな取組を採用し、蔵人が酒造期間中でも休める体制づくりを開始。製麹をはじめ各工程におけるデータの蓄積と分析を始め、数値化できる工程と造り手のノウハウに委ねるべき工程の差別化にも取り組んでいます。

一方、変わらぬ酒造りの原点を木の「幹」として、「枝葉」としての新しい酒造りにも挑戦しています。壜内二次発酵と低アルコール原酒の技術を採用した微発泡性日本酒や、新たな酒米を使用した商品、低精白の商品の開発などにも取り組んでいます。

最新技術を取り入れつつも、伝統の味を守り続けることが私たちの使命です。

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

2023年に放送されたTBSのドラマ「VIVANT」では、主人公のルーツが島根県にあり、奥出雲町の国指定重要文化財「櫻井家住宅」が主人公の父の実家として使われました。このドラマの効果で、櫻井家住宅や歴史を紹介する可部屋集成館、そして「大原新田」「鬼の舌震」などが人気の観光スポットになっています。

ドラマの乃木家は「たたら製鉄御三家」という設定でした。奥出雲の地がたたら製鉄に必要な大量の木炭と良質な砂鉄を調達できる土地であったことから製鉄業が千年以上栄えてきました。日本刀の原料である和鉄「玉鋼」もこの地のたたら製鉄技術によって生まれ、日本一の生産地として名高い歴史があります。その名を冠した「玉鋼」というお酒も弊社では造っており、全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。地元・島根県では、贈り物の定番としてご愛飲いただいています。

また、奥出雲の景観はたたら製鉄と密接に関係しています。棚田は原料である砂鉄の採取跡地を広大な稲田に再生し、燃料の木炭山林を永続的に循環利用するという持続可能な産業として機能していました。この鉄づくりから今日の農業へと連なる千年の物語は、日本遺産にも認定されています。

ぜひ一度足を運んでいただき、奥出雲の歴史・自然を感じてみてください!

―最後に、読者へのメッセージをお願いします!

奥出雲は、お米の「西の横綱」と呼ばれる仁多米で知られる、日本でも有数の米どころ。山深い豪雪地帯で、昼夜の寒暖差が大きく、酒造りには最適の土地です。

弊社は、そんな奥出雲の地で、地元産の酒造好適米を主に使用し、船通山から流れ出た清らかな斐伊川の伏流水でお酒を醸しています。

厳しくも豊かな奥出雲町の自然に支えられた当蔵のお酒は、「飲み飽きない、いつまでも飲んでいたくなるお酒」として、お客様の思い出に残るような特別な瞬間にも、日常の晩酌シーンにも寄り添うことができるラインナップをご用意しています。

奥出雲の歴史・風土に育まれた当蔵のお酒を、ぜひお楽しみください。

今回ご紹介した酒蔵について

【島根県】
簸上清酒合名会社
島根県仁多郡奥出雲町横田1222
https://sake-hikami.co.jp/

 

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酒蔵プレス編集部

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