地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第199回目の当記事では、熊本県球磨郡(くまぐん)の那須酒造場(なすしゅぞうじょ)を特集します。
昔ながらの道具と技、球磨の心。
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
大正6年に創業で家族経営の小さな蔵元です。四方を山に囲まれた秘境・熊本県人吉球磨盆地に移り住んだ先祖が、寒暖差が激しいこの地特有の自然が生み出した米と清水を使い、焼酎造りを開始しました。初代の那須虎治より始まり現在4代目ですが、創業当時の製法を軸に磨き続け、今でも昔ながらの酒造道具を用い仕込みを続けています。
代表銘柄の「球磨の泉 常圧蒸留」は現在米焼酎ではとてもシェアが少ない昔ながらの「常圧蒸留方式(高温蒸留)」で旨味やコクの強い米焼酎を今でも造り続けています。毎年行われる熊本国税局酒類鑑評会では16年連続の「優等賞」を獲得するなど品質の高さを評価頂きました。
―代表銘柄は?
「球磨の泉 常圧蒸留」
世に通常よくある米焼酎よりも旨味が強く、長期貯蔵していることもありまろやかな飲み口も特長です。
お薦めの飲み方:お湯割り、ロック。
お薦めの地元料理:煮込み料理などに相性が良いですが、郷土の伝統食である豆腐の味噌漬け、山うに豆腐をつまみながら楽しむのもお薦めです。
伝統の手造り、醸す心の調べ。
―酒造りで心がけていることは?
私たちの蔵といえば「伝統」と「手造り」。機械と言えるものはポンプ程度で、洗米から仕込みに至るまで手作業での工程を行っています。
昔ながらの道具を使った手造りには膨大な労力が必要となりますが、人間の五感を最大限に活用した焼酎造りは日々の自然環境などの細かい条件をクリアすることが出来、なにより愛着も人一倍です。伝統をただ引き継ぐだけでなく、新しい情報をしっかりと学んだ上でどれだけ色を付けられるかもこれからの世代の役目。
自分勝手かもしれませんが、せっかくの小さい蔵ですので、商売中心に多様な需要に振り回される事なく、私たちが本当に良いと思える酒質だけを追求するというエゴを持ち、焼酎造りに向かおうと思っています。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
人吉球磨地域は神社仏閣が数多く存在する風水の地です。「相良33観音巡り」でスピリチュアルな体験を楽しんだり、日本3大急流の一つでありこの地の中心を流れる「球磨川」で、船での急流下りやラフティングなどの面白い体験をすることができます。
体験後は山の幸、川の幸溢れる料理と共に、私達の焼酎を含めた「球磨焼酎」を味わい、神秘的な夜を過ごしていただければ幸いです。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
500年以上の歴史も持つと言われるこの地ならではの米焼酎を「球磨焼酎」と呼び、産地呼称が認められた本格焼酎のブランドのひとつになりました。
私達の他にも多くの蔵元があり、それぞれで個性のある焼酎造りを行っています。全国的にはまだまだ知名度の低い球磨焼酎ですが、多様な風味を味わっていただけたらと思います。
令和2年に大きな水害に見舞われ復興半ばの地域ですが、お時間があれば是非おいでいただき、この地を楽しみ、応援していただけると幸いです。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
今回ご紹介した酒蔵について
【熊本県】
有限会社那須酒造場
熊本県球磨郡多良木町久米695
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