地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第55回目の当記事では、神奈川県足柄上郡 (あしがらかみぐん)の 株式会社瀬戸酒造店 (せとしゅぞうてん)を特集します。
地域を活性化するために再始動した酒蔵
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
慶応元年(1865年)創業、1980年から2018年までの38年間、自家醸造を休止していましたが、地域を活性化するために再始動した酒蔵です。
丹沢山(たんざわさん)と富士山の伏流水(ふくりゅうすい)を使い、全量小仕込みで手作業による丁寧な酒造りを心掛けており、再始動してからIWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)やKuraMasterなどの海外のコンクールで多くの賞を受賞しています。
―代表銘柄は?
幕末からの伝統を受け継いだ蔵付き酵母の「酒田錦」。
伝統の技と柔軟な発想で日本酒の可能性を拓く「セトイチ」。
開成町(かいせいまち)に広がる豊かな季節風景を表現したあじさい花酵母の「あしがり郷」。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
「セトイチ」は、様々な酵母と醸造技術を駆使し、多才で個性的な日本酒を表現するシリーズです。
誰と、いつ、どんな気分で、どの肴で飲もうか。そんなイメージが膨らむように、ネーミングとラベルデザインでもそれぞれの個性を表現したシリーズです。
酒蔵プレス唎酒師による「セトイチ 手の鳴る方へ」テイスティングノート
●香り
ふくよかな吟醸香。生酛由来の乳酸。懐かしい甘いりんごと乳酸菌の飲料を思い出すような香りです。これがお米から造られているとは思えません。
●味わい
生貯蔵酒のフレッシュ感から入ってきて、口に広げると心地よい酸味が広がり、飲んだ時に舌に残る「旨味酸味苦味」、三位(酸味)一体の味わいがとても素晴らしいです。鼻抜け香は乳酸を舌で十分に感じ取れることと相まって、リンゴの甘い蜜のような抜け感が心地よいです。
●ペアリング
白子ポン酢に合います。必ず紅葉おろしを乗っけて、軽くレモンを搾ってください。白子の旨味成分、ポン酢とレモンの酸味、紅葉おろしの辛味とみずみずしさを上回る日本酒の味わいがすごくいいです。
●総評
雄町、原酒の力強さ、生酛の繊細さ、1回火入れのフレッシュ感、アルコール感の強くない味わいは、夢の中でも思い出してしまうほどの日本酒。
"そんなに旨けりゃ、鬼さんよ、こちらにもお裾分けをくれやしまいか。
手を叩けども鬼の返事はなく、聴こえるは食いしん坊の高いびきばかり。"
詳細はこちら→https://setosyuzo.ashigarigo.com/products/121/
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
豊かで、飲む人の喜びとなるような酒造りを目指しており、そのための酒に具えたいと考える事柄は、次の5点です。
- センターがしっかりしていること
- 良いものが持つ本質的な軽みがあること
- 静かであること
- 品の良さと荒々しさが同居していること
- 長所が欠点を上まわること
築300年の古民家
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
瀬戸酒造店の本家にあたる地域の名主を務めた瀬戸家のお屋敷である「あしがり郷瀬戸屋敷」です。築300年の古民家で、瀬戸酒造店の日本酒を使った果実酒づくりや、釜戸や囲炉裏を使った料理体験ができます。
また、瀬戸酒造店の酒粕や麹を使ったソフトクリームや調味料などを買える「Atelier hacco」や、甘酒ドリンクや醤油麹トーストなどが食べれる「Café hacco」があります。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
瀬戸酒造店がある開成町は、新宿から1時間ちょっとでアクセスできる、心地よい田舎です。
四季折々の表情を見せてくれる田んぼ、水路のせせらぎ、茅葺屋根(かやぶきやね)の古民家、あじさい、ホタルなど、どこか懐かしく、居心地のよい時間が流れる町で、年々ファンが増えています。
ぜひお立ち寄りください。
今回ご紹介した酒蔵について
【神奈川県】
株式会社瀬戸酒造店
https://setosyuzo.ashigarigo.com/
神奈川県足柄上郡開成町金井島17
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