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データと人の手で進化する酒造り【梅美人、鷹雄】梅美人酒造株式会社-愛媛県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第8回目の当記事では、愛媛県八幡浜市(えひめけんやわたはまし)の梅美人酒造(うめびじんしゅぞう)を特集します。


伊方杜氏が造りだす日本酒 梅美人

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

梅美人酒造は大正5年愛媛県八幡浜市の地に「上田 梅一」が創業し105年の歴史を経て現在に至ります。明治期には「伊予の大阪」とよばれ、港を利用した商業が盛んでした。その背景には、明治3年に宇和島藩が民間につくらせた八幡浜商社の伝統があった為と言われています。全国的に有名な漁場で今は埋め立てが進み海岸はかなり離れましたが昔はかなり近いところに海があり、弊社の23mの赤煉瓦の煙突が船から見える港のランドマークになっていました。

愛媛県は東予、中予、南予の3つの土地に分かれ独自の風土が根付き南予はどっしりとした味わいのあるお酒です。梅美人のお酒は伊方杜氏と言われる杜氏集団がメインとなって造られてきました。

―代表銘柄は?

創業当初からある酒蔵の名前にもなっている「梅美人」と私の代で付けた「鷹雄」です。当時お酒で「美人」と付けるのは「綺麗な酒質の」という思いがあり、そこに創業者「上田 梅一」から「梅」をとり「梅美人」となりました。

もう一つの「鷹雄」は人間国宝である金工鍛金家の「奥山 峰石」先生に名前と書をいただいてそれを銘柄にしました。洗米から絞りまでのほとんどを手作りで行い、手間をかけて最後までこだわり、全てに対して妥協しないという信念で作り上げたいという気持ちで取り組んでいます。
この銘柄は「兵庫県産山田錦:精米歩合40%」のお米を使用して梅美人酒造では鑑評会出品酒である大吟醸に使用しています。

―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?

イチオシ商品は「純米大吟醸 梅美人」です。お米は「しずく媛:精米歩合50%」、酵母は「協会18号」を使用した純米大吟醸です。鑑評会用と同じ醪経過を目指し低温発酵で32日前後発酵させました。18号酵母にしては大人しい香りですが、口に含むととろみのあるフルーティーな甘旨を感じる事ができます。後味もあまり残ることなくキレていきます。雪冷え〜冷やでお飲み下さい。

瀬戸内の白身魚を中心とした鯛の刺身などの淡白な食文化に合います。弊社のやや甘口のすっきりとしたお酒に非常に合いやすいです。

酒蔵プレス編集部

酒蔵プレス唎酒師による「純米大吟醸 梅美人」テイスティングノート

●香り
華やかで熟れたバナナのような香りです。少し大人っぽい米のふくよかさと日本酒独特の吟醸香でもあるセメダイン臭も少しします。

●味わい
甘みと米のふくよかさが口中に広がり、舌に苦みが残ります。酸味の中でもアサリやハマグリに多く含まれるコハク酸のように苦みと酸が混じっている通な味わいです。

●ペアリング
鶏皮ポン酢と合わせると、鶏皮の脂、ポン酢の酸味、日本酒の苦みが合わさり、マリアージュが生み出されます。あさりのバター蒸しと合わせると、コハク酸が同調し、良いペアリングになります。

●総評
日本酒の苦みが特徴的なお酒で、大人っぽいイメージが持てます。燗酒にすることで米のふくよかさが増し、ふくよかさの中の苦みがビターチョコレートのように広がります。


最終的な目標は、理想とするお酒を自由に作り出すこと

―酒造りではどんなことを心がけていますか?

人の手と機械のバランスを考え丁寧な酒造りを心がけています。今期からは新戦力も加わり、洗米から始まり製麹、醪管理、絞り、貯蔵、瓶詰めまで全ての工程を一から見直し、自分達の納得できるお酒に近づくよう検討実施してきました。
また反省点のフィードバックや再現性を高めるため麹や醪管理もより詳しく数値を取ることで今後の資料データとして蓄積しています。私達の理想とするお酒を自由に作り出せるようになるのが最終的な目標です。

八幡浜市は残念ながら米所ではありませんが、愛媛県全体では酒造好適米である「しずく媛」、酵母も愛媛県酵母の「EK-1」などの開発も盛んです。それらを用いたオール愛媛のお酒を造り、地域に根付いたお酒の作りも目指してます。

梅美人酒造の酒蔵4箇所が国の登録有形文化財

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

お酒EC運営を運営しているある会社のサブスクリプションでお酒の提供が決まったことです。梅美人酒造を私達の蔵ではなかなかできない規模で日本酒ユーザーの方に知って頂けるので、大変有り難く、飲んで頂いた方の声も楽しみです。

梅美人酒造の酒蔵4箇所が国の登録有形文化財に指定されています。大正初期に作られた建物の一部がそのまま残っていたりしますのでお酒だけでなく建物にも魅力があり外国人観光客の方達もよく蔵見学にいらしてました。八幡浜の観光スポットの一つです。

小学生、中学生に対して「日本酒は井戸水を利用してお酒造りをしている事、山を綺麗に保つことがその水を守ることに繋がる事」を学校の社会見学を通して伝えています。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします!

皆さん、こんにちは。この度は梅美人の記事に目を通して頂き有難うございます。首都圏、関西圏への出荷もまだまだ少なく、初めて名前を聞く方も多いと思います。この機会に是非覚えて頂けたらとても嬉しく思います。呑めるところも少ない為、なかなか見かけることができないと思いますが興味を持っていただいた方に気軽に飲んでもらえるよう、販路拡大頑張っていきます。

昨年、某酒蔵での勉強を終え28歳になる長男も酒蔵に戻ってきて、今期から親子メインでの酒造りが始まりました。1仕込み毎に前年までと違う改善点が見え試行錯誤の日々でした。来期への課題も見つかっています。私達の思う美味しいお酒に向け毎年変わっていくと思います。お酒の変化を私たちと一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

今回ご紹介した酒蔵について

【愛媛県】
梅美人酒造株式会社
https://umebijin.com/
愛媛県八幡浜市1557-2

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酒蔵プレス編集部

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