地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第133回目の当記事では、山形県鶴岡市(つるおかし)の渡會本店(わたらいほんてん)を特集します。
山形県内の銘醸地である伝統な酒蔵
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
当社は元和年間(1615年~1624年)創業、現当主(渡會俊仁)で十八代目となる山形県内でも伝統のある酒蔵です。蔵の立地する鶴岡市大山地区は古くから酒造りの町として知られた銘醸地で、最盛期には40軒以上の酒蔵が軒を連ねていました。
また江戸時代は幕府直轄の天領であり、現在でも人口6,500人規模の大山地区には4軒の酒蔵が酒造りを続けています。
―代表銘柄は?
山形県最高峰の秀峰「鳥海山」、出羽三山の主峰「月山」の万年雪や山形県の旧国名が「出羽國」であったことから「出羽ノ雪」という生もと造りを中心にして造られるお酒と、
契約栽培でお米の品種にこだわり、また渡會本店の語呂合わせで「田んぼからとれた米(来に似ています。)で和みがやって来てほしいとの思いでネーミングした主に純米吟醸酒である「和田来」(わたらい)シリーズ、
そして最近商標登録を完了した新感覚タイプの日本酒やその他化粧品の素材や「甘酒」等のノンアルコールの部分も含めた「庄内美人」の三本柱になります。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
- 出羽ノ雪 生酛純米 雪
今回お燗酒コンテスト2022ぬる燗部門で最高金賞をいただいた当社の代表銘柄の「出羽ノ雪」の一文字「雪」を冠した「雪」純米酒は、アメリカ、カナダ、台湾他広く海外にも輸出され現地の料理とのマリアージュで大変好評を得ています。
赤ワインのフルボディータイプの酒質オイリーな海外の調理法とも良く合い、また乳酸菌の乳酸発酵を利用した様々な有機酸の酸味が料理の余分な油脂を洗い流し、次の料理をいただく準備を整えてくれます。
蔵の立つ鶴岡市はユネスコの食文化創造都市ネットワークに日本国内で最初に認定された食文化の豊かな地域で、四季折々素晴らしい食材、料理に恵まれ、「雪」純米酒との相性の良さはいうまでもありません。
「凡事徹底」を心かけている酒造り
―酒造りで心がけていることは?
とにかく「凡事徹底」。元メジャーリーガーのイチロー選手や現在活躍中の大谷翔平選手、プロスケーターの羽生結弦選手に共通するのは一つ一つの作業(練習)を非常に長い間(現役を退いた後でさえも)手を抜かずに繰り返し行う継続力の素晴しさです。
酒造りも同様で気の遠くなるような単純作業を誠心誠意行うことが大切です。加えて皆様方のお口に入るものですので、常に清潔でクリーンな環境での作業を心がけています。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
大山地区では過去27回に亘って「大山新酒・酒蔵まつり」が開催されてきました。ここ2年間は新型コロナウイルスの流行によりリアル開催は出来ずリモート開催ですが、それ以前は地元はもちろん山形県内はもとより日本各地や、海外からの来場者の方も数多くいらっしゃいました。
徳川四天王の筆頭家老であった酒井忠次氏の3代目忠勝公がここ庄内地方に入部して、今年は400年になります。当渡會家も大体同時期に酒造りを開始していて、現酒井家当主も十八代目です。
また鶴岡市にはクラゲの展示数が世界一の鶴岡市立加茂水族館がありコロナ禍の中連日多くの観光客で賑わいを見せています。前述の出羽三山は西の伊勢参り、東の奥参り(出羽三山参り)と並び称され、現在でも熊野古道とともに山岳修験信仰の中心地です。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
コロナ禍ではありますが、昨年令和3年度(令和3年1月1日~令和3年12月31日)は日本食品の輸出が初めて1兆円を超え、その中で日本酒も400億円を超えるという過去最高の金額と数量を記録し、8月末まで今年はそれを上回るペースで推移しています。
とは言えフランスワインの輸出金額は1兆円を超えていることを考えると、同じ醸造酒である日本酒もそのポテンシャルは十分あると思います。
日本の人口の14倍以上の中国の飲酒出来る人々が1年間に1回日本酒の四合瓶(720ml)を1本飲んでくれると日本酒の今の国内生産量は2倍になると言われています。やがて中国の人口を抜くであろうインド他アジアには人口の多い国々がひしめき合っています。
是非皆様も近い将来「世界酒」になるであろう「日本酒」のサポーターとして益々のご愛飲をお願い出来れば有難く思います。
今回ご紹介した酒蔵について
【山形県】
株式会社 渡會本店
https://dewanoyuki.jp/index.php
山形県鶴岡市大山二丁目2番8号
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