酒造業界の「元旦」にあたる7月1日、東京・福生に日本酒の複合体験施設「&KASEN(アンドカセン)」が待望のグランドオープンを迎えました。
文政5年(1822年)の創業以来守られてきた「丁寧に造って、丁寧に売る。」という家訓。そこに今回、新たに「丁寧に伝える。」という想いが加わりました。
オープン前日に行われた、造り手の熱い想いが伝わる先行内覧会の様子をレポートします。

十六代目当主が語る、200年の重みと「これから」の役割
内覧会は、十六代目蔵元・田村半十郎氏の挨拶から始まりました。

印象的だったのは、時代に合わせて酒蔵の役割を変えていくという決意です。「ただ造って売るだけでなく、背景にある文化や物語を皆さまに『丁寧に伝える』姿勢を付け加えたい」という言葉に、歴史ある蔵が街に開かれる瞬間の熱量を感じました。
刷新された3つのブランドと、五感で楽しむショップエリア
続いてはショップエリアへ。ここでは田村酒造場で造られる日本酒が「嘉泉 EDO」「嘉泉 TOKYO」「&KASEN」の3ラインごとにまとめられ、木を基調とした多摩産材の木目が美しいディスプレイ台に並べられています。




ショップ内には100円(1コイン)で試飲できる日本酒サーバーが設置されており、気軽に自分好みの一杯を見つけることができます。
また、世界一のパティシエ・江森宏之氏とのコラボによる酒粕ジェラートや、社長自らが試食して厳選したという燻製おつまみなど、「日本酒×洋」の可能性を広げるアイテムが並びます。



多摩川の風景を写し、酒蔵のシンボルを望む空間
次にご案内いただいたのはいよいよメインとなるレストランとバーが併設された建物。
バーからは歴史ある蔵が、レストランからはモダンな様相の庭園が広がり、細やかな工夫がうかがえます。

庭園はわずか150メートル先を流れる多摩川の流れをモチーフにしており、中洲に見立てた場所には、お米への敬意を込めてイネ科の植物が植えられています。
併設されたSAKE-Barは、門前仲町の人気店「酒亭 沿露目」の大野尚人氏が監修。カウンターに座ると、正面に蔵の煙突が綺麗に見える設計になっており、夜にはライトアップされた蔵を眺めながらお酒を楽しめるそうです。

「嘉き水」と日本酒が織りなす、驚きのペアリング体験
レストラン会場では、専務の田村貴典さんによる一皿ごとの解説とともに、贅沢なランチコースをいただきました。

特に驚いたのが、最初の一皿と日本酒カクテルの組み合わせです。
季節野菜のすり流し × 東京和醸ソニック
仕込み水「嘉き水」で引いた出汁でつくられたジュレがとうもろこしの甘みを引き立て、カクテルのほろ苦さが後味をすっきりと締めてくれます。単体で飲むよりも料理と合わせることでお酒の良さが際立つ、新しい発見でした。
海老ハトシ × やわくち
長崎県の名物料理「海老ハトシ」は揚げた食パンの香ばしさとエビの旨味を感じるのに対し、アルコール11度の「&KASEN やわくち」が優しく寄り添います。日本酒に慣れていない方にもおすすめしたい、ふくらみのあるやわらかな味わいです。

季節の土鍋ご飯と歴史ある器
穴子と万願寺とうがらしの土鍋ご飯は、「100年以上、蔵から出したことがないかもしれない」という貴重な古陶器で提供されました。塗りのお椀も今では作られていない形のものだとか。田村家の歴史を掌で感じながらいただく体験は、まさにこの場所ならではです。



200年の時を歩く、新生・蔵見学ツアー
最後は、蔵の方のご案内で蔵見学ツアーへ。

創業204年の歴史を持つ蔵内は、建物全体が登録有形文化財に指定されています。仕込みエリアの入口に祀られた松尾大社の神棚や、40年前まで女人禁制だったというエピソードなど、案内を聞きながら巡ることで、酒造りの精神性が肌で伝わってきました。



まとめ:伝統を「体験」として持ち帰る場所
「&KASEN」は、単なる飲食店やショップではなく、造り手の想いや歴史を「体験」として共有し、共に日本酒の未来を育んでいく場所でした。
2026年7月1日の「酒造年度の元旦」に産声を上げたこの施設が、福生の街、そして日本酒文化にどのような新しい風を吹き込むのか、これからの展開が楽しみです。

概要
名称: 日本酒体験施設「&KASEN」
所在地: 東京都福生市福生609(田村酒造場 敷地内)
営業時間:
ショップ:10:30~17:30
レストラン:ランチ11:30~15:00 / ディナー17:00~22:00
バー:11:30~22:00
定休日: 月曜日
料金例: 蔵見学ツアー 2,700円(税込・バー飲み比べ付・要予約)
公式サイト: https://www.seishu-kasen.com/
https://www.sakagura-press.com/