地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第11回目の当記事では、山形県寒河江市(やまがたけんさがえし)の千代寿虎屋(ちよことぶきとらや)を特集します。
大江酒米研究会、豊国耕作者の会の2つの酒米生産グループと一緒になって米作りからの酒造りを実践
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
当社の創業は1700年初頭、現在の山形市において初代大沼惣左エ門によると伝えられています。
幕末には家運が衰微しましたが、八代目大沼保吉の代になると寿の名声が高まり、当時では驚異的な4,500石の造石をなしました。山形に二工場を設け寒河江では元禄末期創業の石山蔵を引き継ぎ、増改築を成し寒河江工場として操業させました。
この寒河江の蔵が大正に入り分家独立し、現在の「千代寿虎屋株式会社」となりました。創業以来、地域密着の酒造りを基本とし、磯部理念に掲げられる4条件“安全で安心して食べられること”“ごまかしのないこと”“味のよいこと”“品質に応じた買いやすい価格”を商品開発の理念として手間暇をかけた手作りの地酒を醸しています。
現在は全量山形県産米を使用して地酒の本質を考えた日本酒造りに取り組んでいます。特に使用する米にはこだわりを持ち、高級酒を作るのに必要な酒造好適米については大江酒米研究会、豊国耕作者の会の2つの酒米生産グループと一緒になって米作りからの酒造りを実践し今日に至っています。
また日本酒製造とともに醸造発酵技術と地場産原料を使用した焼酎やリキュールなどを製造し幅広い商品を開発しています。
―代表銘柄は?
- 代表銘柄 千代寿(ちよことぶき)
明治九年に、時の県庁内務部長が“壽”の名称を付けてくれて、分家独立時にその冠として“千代”を冠して、千代寿の銘柄になりました。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
千代寿虎屋のみの酒米“豊国”を使用した“豊国純米生原酒 千代寿”です。味わいと切れのある生原酒です。5月6月は山菜の時期でもあるので、山菜や月山細竹は日本酒との相性ばっちりです。
酒蔵プレス唎酒師による「豊国純米生原酒 千代寿」テイスティングノート
●香り
キウイのような上立ち香、含み香、鼻ぬけ香まで続き、とても香り高いお酒です。生原酒らしい爽やかなアルコール感もあり、とてもすっきりしています。
●味わい
なめらかな口当たりと生原酒のピリピリ感、舌に残るミネラル感のあとに広がる甘さがとても心地よいです。日本酒度+2という辛口の喉越しの良さも最後に広がる心地よい甘さを際立たせます。
●ペアリング
モッツァレラチーズの塩味と甘みが日本酒のフルーティさと相まって綺麗なマリアージュを生み出します。カプレーゼと合わせてもトマトの酸味が加わりまた違った味わいを楽しめます。
●総評
香りと味わい、余韻、それぞれを見ると複雑に思えますが、ひとつにまとまることにより、素晴らしい味わいを生み出しているお酒です。虎ラベルもカッコよく輝いています。
地元の米だけを使用しての酒造り
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
地酒の本質である、地の酒でありたいと考えており、地元の米だけを使用しての酒造りを長く続けています。農家からいただいた米は全量自家精米で、丁寧に精米して米の特性を引き出すように洗米、浸漬から蒸しまで気を配っています。
製造量が少ない分、丁寧な作業を心がけて醸しています。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
小さい酒蔵ではありますが、地域性のある“豊国”米を使用した千代寿らしい味わいを是非楽しんでいただきたいと思います。
今回ご紹介した酒蔵について
【山形県】
千代寿虎屋株式会社
http://www.chiyokotobuki.com/
山形県寒河江市南町2-1-16
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