地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第18回目の当記事では、奈良県橿原市(ならけんかしはらし)の河合酒造(かわいしゅぞう)を特集します。
今井町唯一の酒蔵、母屋は重要文化財
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
奈良盆地の中ほどにあり、大和三山に囲まれた今井町は、戦国末期に浄土真宗の寺内町として成立しました。今井町は「大和の金は今井に七分」といわれるほど栄えた商業都市であり、現在も江戸時代の街並みを有し、伝統的建造物保存地区にも指定されています。
弊社は今井町に残る唯一の酒蔵で、母屋は国指定の重要文化財・河合家住宅、その奥が酒造場となっております。屋号を「上品寺屋(じょうぼんじや)」と称し、創業は江戸中期、280余年の歴史があり、現在16代目の蔵元が醸造を行っております。
―代表銘柄は?
代表銘柄は『出世男(しゅっせおとこ)』。縁起の良い名前と喜ばれています。歴史ある土地に縁の深い銘柄『うねび』『香具山(かぐやま)』『宗久(そうきゅう)』はお土産にも最適です。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
看板商品である『本醸造原酒 出世男』はアルコール分18%と最近の市場傾向とは逆行しておりますが、原酒ならではのボディー感とふくらみを堪能していただけること間違いありません。
冷でもぬる燗でも季節に合わせた愉しみ方ができ、ロックで召し上がっていただくのもおすすめです。和食はもとより、中華料理にも合う食中酒です。柿の葉寿司を軽く炙って肴にするのも良しです。
『奈良うるはし純米酒 出世男』は奈良県の清酒酵母「奈良うるはし酵母」を使用し、全量県産米ヒノヒカリで醸しています。
さっぱりとした口当たりはするすると喉を通っていきます。よく冷やしてお造りや季節野菜の煮物などによく合います。夏季には鱧の湯引きなどとご一緒にどうぞ。
酒蔵プレス唎酒師による「本醸造 出世男」テイスティングノート
●香り
米のふくよかさとアルコールのすっきり感が心地よい本醸造ならではの香り。角のない香りでふくよかな丸みも感じるので、どんなシーンでも合います。
●味わい
米のふくよかな旨味、甘み、酸味がバランスよく感じます。雑味がなく、白米を噛み続けたときに広がる旨味をひと飲みで体感できるお酒です。
●ペアリング
鯛などの白身魚の刺身とよく合います。白身魚の臭みを打ち消し、低脂肪で高たんぱくな味わいを、日本酒がより引き立てる効果があります。
●総評
淡麗な本醸造酒らしく、スッと口の中から消えるキレがありつつ、米の旨味が素晴らしく、米のふくよかさと甘みを鼻と口中で感じます。バランスが良くどなたでもおいしく飲めます。
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
造り手の顔が見える丁寧な酒造りを心がけています。少量生産ゆえに一つ一つの工程を大切にし、お酒を醸すことが大切だと考えています。
伝統的な産業、発酵の知恵、技術
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
今井町は国指定重要文化財の家屋が9軒、県市指定を合わせて8軒の文化財があります。一般公開されている住宅もあり、見どころはたくさんあります。実際に住民が生活している“生きた町”であるがゆえ、いわゆる観光地とは少し違った趣きがあり静かな暮らしが営まれています。
映画やドラマ、CMの撮影にもよく使われ、それを目当てに来られるお客様もおり、最近では古民家を利用したカフェや飲食店もでき、様々な年代のお客様が散策してらっしゃいます。
当蔵でも酒造期以外は酒蔵の一部に設えた展示室を公開しております(現在は感染拡大防止のために閉鎖)。実際に蔵で使用していた道具類やお酒の製造工程の説明をご覧いただけます。
伝統的な産業、発酵の知恵、技術を肌で感じてもらえれば幸いです。
足をのばせば、橿原神宮や藤原京跡、古代史のロマンあふれる飛鳥など史跡も多くあります。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
奈良県は日本清酒発祥の地。歴史と伝統を大切に、お客様の日々の暮らしやライフイベントにそっと寄り添うお酒を造っていきたいと思います。
今回ご紹介した酒蔵について
【奈良県】
河合酒造株式会社
https://www.facebook.com/syusseotoko
奈良県橿原市今井町1丁目7-8
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