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創業天保元年(1830年)、自社醸造再開2年目の“老舗ベンチャー酒蔵”【歓喜光、悠久の光】澤田酒造株式会社-奈良県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第19回目の当記事では、奈良県香芝市(ならけんかしばし)の澤田酒造(さわだしゅぞう)を特集します。


2019醸造年度、約30年ぶりに澤田酒造の酒造りが復活

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

奈良県には、酒造りの神様として全国の酒蔵から広く信仰を集める大神神社や、室町時代に僧坊酒の一大生産拠点として近代醸造法の基礎となる酒造技術を確立し、奈良が清酒発祥の地と言われる所以となった正暦寺があり、日本酒文化との深い結びつきがあります。

澤田酒造は、その奈良県の中西部、奈良盆地の西端、西に霊峰・二上山を仰ぐ香芝市五位堂にある酒蔵です。創業は江戸時代末期の1830年(天保元年)、初代・澤田定四郎が現・本社所在地である五位堂の地で紺屋業を営みながら、周辺の田んぼで獲れた米を使って酒を造ったのが始まりです。

明治時代初期には、三代・澤田定十郎が“造り酒屋”として酒造業を本格化。醸造学者でもあった四代・澤田定司は、良い酒を造るためには、まず蔵人が健康である必要があると考え、過酷な作業に従事する蔵人のために発酵健康食品を考案。当社の健康食品事業の礎を築きました。

昭和の時代に入ると太平洋戦争により一時、酒造りを休止。跡取りが戦死する苦難を乗り越え、戦後まもなく醸造を再開。五代・澤田定子は、時の杜氏・井口千松と共にさらなる酒質の向上に取り組み、現在の主力銘柄『歓喜光』を開発。1988年(昭和63年)には全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。

しかし、その後、製造従事者の高齢化等の諸事情により、主要醸造工程を協力会社に委託することを決断。長らくの間、休造状態となっていましたが、2019醸造年度より自社醸造を再開。製造技術者の育成や設備の更新を行ない、約30年ぶりに澤田酒造の酒造りが復活しました。


歓喜の酒『歓喜光(かんきこう)』/正真正銘の地酒『悠久の光(ゆうきゅうのひかり)』

―代表銘柄は?

代表銘柄は『歓喜光』と『悠久の光』です。
『歓喜光』は、先代の澤田定子が「これからの時代の日本酒は品質が重視される」として立ち上げた高品質志向の銘柄で、純米酒においては麹米に山田錦を100%使用したラインナップとなっています。

名前の由来は、当社のお酒を飲んだお客様に喜んでいただき、その喜びや活力が光の如く周りの人にも広がるようにと願いを込めたもので、先代が宝塚音楽学校で教鞭をとる声楽家でもあったことから、ベートーヴェンの 交響曲第九番の大合唱をイメージし、“歓喜の歌”ならぬ“歓喜の酒”によって人々を喜ばせたいという思いもあったと言われています。

一方、『悠久の光』は、地元地域の農業振興と特産品創出をめざし、地元農業者と酒蔵の共同プロジェクトから生まれた銘柄で、地元・香芝市で栽培された原料のみで醸される正真正銘の“地酒”です。

『悠久の光・純米』は、地元遊休農地を活用し栽培したヒノヒカリ100%のお酒で、粒の小さい飯米を限界まで磨き低温でじっくり醸すことで、飯米酒でありながら芳醇な香りと味わいが特徴です。

―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?

いちおしの商品は、このほど「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2021」で最高金賞、インターナショナルワインチャレンジ(IWC)」でゴールドメダルをいただきました【歓喜光 純米吟醸「小さな喜び」】です。

滑らかで程よい甘みの口あたりでありながら、後味は心地よい酸味が残る味わいは、日本酒が苦手な方や海外の方にも飲んでもらいやすいのではないかと思います。冷蔵庫から出して、しばらく経った温度(約15℃前後)で、是非ワイングラスでお楽しみください。

酒蔵プレス編集部

酒蔵プレス唎酒師による「歓喜光 純米吟醸「小さな喜び」」テイスティングノート

●香り
パンチのあるアルコールとふくよかさ、渋み、ほのかな吟醸香。冷やすと爽やかさが増し、燗にするとふくよかさが増します。

●味わい
やや酸味が強く、舌にピリピリと刺激を感じます。口の中で転がすとまろやかな酸味に変わり、喉越しのキレの良さが心地よい。

●ペアリング
酸味が強いので甘いアイスやチョコレートとの相性が良いです。燗をつけた日本酒をバニラアイスにかけてアフォガードのようにして食べてもいいですね。

●総評
IWC2021の純米吟醸部門でゴールドメダルを受賞、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2021」プレミアム純米部門で最高金賞を受賞した日本酒。酸味に特徴があり、ワイングラスで楽しむのにとても合っています。


“初心”であることこそ大きな強み

―酒造りではどんなことを心がけていますか?

基本に忠実でありながらも既成概念にとらわれず、常に向学心と情熱、丁寧さをもって酒造りをすることです。

2020年に自社醸造を再開するにあたり、かつての酒造りを経験した従業員はおらず、ほぼすべての設備を更新する必要がありました。外部から杜氏を招聘する手段もありましたが、当社では、あえて従業員の中から製造責任者を育成する手段を選びました。

醸造試験所での研修や同業他社の酒造りに参加させてもらうなど、酒造りの知識は学んだものの、経験や勘は皆無です。言うなれば酒造りの“初心者”ですが、私どもは“初心”であることこそ大きな強みと捉えています。

“初心”ならではの高揚感、懸命さ、発想力、吸収力はこれから澤田酒造の酒造りにおいて絶対に欠かせないものです。

香芝市初の酒米栽培プロジェクト

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

当社と香芝市、香芝市内の農業者の三者が連携し、香芝市初の酒米栽培プロジェクトを進めています。奈良県固有の酒米である露葉風を市内で栽培し、地元原料にこだわった銘柄『悠久の光』の純米吟醸を醸造する予定です。

当社の製造責任者をはじめとするスタッフが原料米づくりから醸造に至るまで携わる一貫した生産体制は全国的にも珍しい取り組みです。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします!

澤田酒造は、創業天保元年(1830年)、自社醸造再開2年目の“老舗ベンチャー酒蔵”です。

奈良県産の原料米にこだわって、特に純米に力を入れ、小仕込みで丁寧に醸しております。是非一度、奈良の澤田酒造のお酒も召し上がってみてください。

お客様に美味しいお酒をお届けするべく、今後も様々な挑戦をしていこうと思っております。奈良の澤田酒造、『歓喜光』『悠久の光』をどうぞよろしくお願い申し上げます。


今回ご紹介した酒蔵について

【奈良県】
澤田酒造株式会社
https://www.kankiko.jp/
奈良県香芝市五位堂六丁目167番地

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酒蔵プレス編集部

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