地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第31回目の当記事では、長崎県諫早市(ながさきけんいさはやし)の杵の川(きのかわ)を特集します。
良か人と良か酒を育む蔵 。
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
天保10年(1839年)長崎県東彼杵町で清酒恵美福の醸造元「丁子屋醸造」として創業した酒蔵です。その後昭和55年に、丁子屋醸造、黎明酒造を中心に4つの蔵が一つになり「清酒杵の川」が誕生しました。
「良か人と良か酒を育む蔵」をモットーに、地元の食に合う食中酒をご提供できるよう地元の原料を中心に使用し、丁寧に酒造りに取り組んでいます。
酒蔵の所在地諫早市は長崎県の中央に位置し、県内の交通拠点の役割を持っている人口13万人の市です。三つの海に囲まれ豊富な山海の食に恵まれています。
毎年3月に開催する蔵開きは、およそ1万人のお客様のご来場がある諫早市のお祭りの一つとなっています。
―代表銘柄は?
- 杵の川
- 黎明
メインブランドである杵の川(きのかわ)シリーズは、地元の様々な食に合うコストパフォーマンスが高い食中酒として県内で人気が御座います。香りは食事を邪魔しない穏やかな香りを意識し、味わいはキレの良さが特徴で、呑み飽きしない味わいです。
復刻ブランド黎明(れいめい)は、諫早市の山田錦産地化事業に伴い再構築したブランドです。およそ100年ほど前に現蔵元瀬頭信介の曾祖父が、有明海に昇る朝日を見ながら命名したブランドで、特に酒蔵のある諫早市内で人気の銘柄となっています。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
- 杵の川特別純米磨き60
杵の川いちおし商品の「杵の川特別純米磨き60」は、弊社田中浩隆杜氏の得意とする協会9号酵母(熊本酵母系)を使用し低温で醸した純米酒で、冷やでは上品な酸によるキレの良さがあり、お燗ではお米の優しい旨みを感じられるお酒です。
福岡国税局酒類鑑評会では、平成29年度に第一位を獲得している純米酒です。諫早市名物の楽焼きうなぎと合わせると、うなぎの濃厚な味わいを純米酒の酸が洗い流し、次の一口が更に美味しくなります。
また諫早市特産の牡蠣と合わせると、牡蠣のクリーミーさと磨き60の優しい旨みが調和し、味わいを増幅させてくれます。
黎明式発酵タンクを使い丁寧に醸しています。
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
地元農家さんの育てた山田錦を始めとした原料米と杵の川場内を流れる地下水で、黎明式発酵タンクを使い丁寧に醸しています。黎明式発酵タンクは、温かい九州でも徹底した温度管理が可能になることが特徴で、低温でゆっくり丁寧に発酵させていくよう気を付けています。
また、杜氏を中心とした「和」を大切にし、良か人による良か酒造りを心掛けています。
伝統の味わいはしっかり継承しつつ、革新的な視野も持って取り組んでいます。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
石橋として日本初の国の重要文化財に指定された「眼鏡橋」は石造のアーチ橋として観光の目玉となっております。
また諫早市内中心部から佐賀方面に向かう小長井町の道路わきに突然現れるフルーツをかたどった「フルーツバス停」は、テレビ番組でも取り上げられ、SNSでも話題となっている名物となっています。
また、酒蔵ではネットを利用したオンライン蔵開きや場内の山あいを活用したアウトドア日本酒イベントが人気となっています。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
江戸時代よりシュガーロードの影響を受けた長崎県の濃醇甘口なお料理と相性の良い、優しい甘口の切れの良い日本酒を心掛け造っています。伝統的な味わいを大切にしつつも、低アルコールの日本酒やスパークリング、オーガニック日本酒などにもチャレンジしており、原料のお米は地元農家さんとの契約栽培で目の行き届くものを中心に使っています。
あまり県外のお得意先様がいないのでお目にかかる機会は少ないと思いますが、ぜひ一度味わっていただければ嬉しく思います。世の中が落ち着いた暁には、ぜひ長崎を体験しにいらしてください。
今回ご紹介した酒蔵について
【長崎県】
株式会社 杵の川
https://www.kinokawa.co.jp/
長崎県諫早市土師野尾町17番地4
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