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誇れる風土を語れる酒、一歩進んだ自在な酒【黒澤、マルト】黒澤酒造-長野県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第57回目の当記事では、長野県南佐久郡(ながのけんみなみさくぐん)の黒澤酒造(くろさわしゅぞう)株式会社を特集します。

厳しくも恵まれた気候の中、良質な千曲川の伏流水を活かし1858年の創業以来、地域に根ざした清酒造り

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

南佐久郡佐久穂町は北に浅間山、南に八ヶ岳の山々に囲まれた人口約1万人の高原の町で、北東に位置しています。

八千穂高原は50万本もの白樺が群生し日本一の白樺美林と呼ばれ、町の中心部を南北に流れるのは、日本一の長さを誇る千曲川(信濃川)です。

その源流より約40㎞、栽培作物が高原野菜から稲作へ切り替わる標高800M地点では、全国屈指の晴天率を誇ります。厳冬期には最低気温が-15度にもなり、厳しくも恵まれた気候の中、良質な千曲川の伏流水を活かし1858年の創業以来、地域に根ざした清酒造りを行っており、現在、酒造業の商いは6代目の黒澤孝夫が担っています。

安政5年(1858年)、当時の郡代(代官)から拝受した酒株証文(酒造りの許可証)は今も大切に保管されています。

明治に入ると、黒澤家はこれまでの生業を拡大し、銀行、呉服、酒、味噌醤油、薬を扱う総合的な商売を展開します。「屋号・マルト」の誕生でした。

このマルトは、マル=太陽、ト=昇る、つまり旭日昇天で、事業の繁栄を意図します。マルト組、マルト呉服店、マルト洋品店、マルト醤油店などが次々に生まれ、マルトの根幹をなす銀行業はやがて十九銀行へと成長、そこへ長野の六十三銀行が合併し、現在の八十二銀行になったのです。

―代表銘柄は?

一つ目の「井筒長(いづつちょう)」は全量長野県米にこだわり、千曲川の伏流水で醸す、濃醇でやや辛口の味わい深いお酒です。井戸の守り手の長(おさ)の意味で、ラベルに舞うのは酒好きの妖精“猩々(しょうじょう)”です。

二つ目は、「純米酒 生もと造り マルト」です。マルトの㋣ ○は太陽・トは登るを意味しており、日が昇る・日の出の勢いを表す屋号を品名と瓶に添えられた稲穂がトレードマークです。生酛の一般流通のブランディングです。

濃醇で、やや辛口で酒の五味「甘酸辛苦渋」をバランスよく感じられるよう、しっかりとした味わいと心地よさを追求しております。

三つ目は、「純米大吟醸 黒澤」です。アメリカ輸出を機に誕生したブランドで、アメリカでは地酒銘柄の中で抜群の知名度を誇っています。その様な中、地元産米・生酛に特化した専門店流通に特化し独特の世界観を表現し幅広いチャレンジを行う、自在なお酒です。

"甘酸辛苦渋"のバランスの良い酒は、鯉料理との相性バツグン

―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?

長野県原産地呼称認定酒である「純米酒 生もと造り マルト」です。

"甘酸辛苦渋"酒の五味のバランスがよく、燗よし冷よしのコクとキレの良い酸、深い味わいの純米酒です。こちらをぬる燗から上燗で、佐久鯉の甘露煮と共にお召し上がりください。

甘しょっぱい味付け、脂の載った鯉にコクとキレの良い酸がリフレッシュしてくれます。

酒蔵プレス編集部

酒蔵プレス唎酒師による「純米酒 生もと造り マルト」テイスティングノート

●香り
生酛らしい乳酸と米のふくよかな香り、少し強めのアルコール感を一つずつ感じます。少し温めると乳酸がより引き立ちます。

●味わい
香りと一体感のある味わいでバランスのよい日本酒です。舌に甘みと酸味と苦み、喉にアルコールと酸のキレが余韻として残ります。

●ペアリング
甘めなタレのかば焼きと合わせると、舌の上ではお米のふくよかさが表れます。甘めのチョコレートと合わせると、日本酒の強い酸味がなくなり余韻も薄くなり、すっきりといただけます。

●総評
生酛らしい複雑さよりも「甘酸辛苦渋」の五味のバランスが取れた飲みやすい日本酒です。合わせる料理によって、様々な表情を見せてくれる食中酒です。

“農・酒・呑・生活(NoSakeNoLife)”をポリシーに風土を醸す

―酒造りで心がけていることは?

~伝統と経験を大切にすると共に新たな発想や挑戦を~

地域の風土・食文化に根ざした酒造りを長野から世界へ発信します。

【人】2009年より杜氏を務める蔵元杜氏黒澤洋平。

【酒造り】一筋に60年の前杜氏である中澤礎の確かな経験と技術を受け継ぎ、情熱とこだわりを持ち、社員及び冬季酒造従事者一丸となって丁寧に醸しております。

【技】呑み飽きしない酒を造りたいという思いから当蔵では、昔ながらの製法「生もと造り」に力を入れております。通常の倍の時間をかけて酵母を育てる手のかかる製法ですが、奥行きのある、旨味たっぷりの骨太な酒を目指してこだわり続けています。

【味】単にお米を磨くのではなく、旨味や酒質に合わせ、濃醇やや辛口で酒の五味「甘酸辛苦渋」のバランスの良い、しっかりとした味わいと心地よさを追求しております。

【原料米】長野県産米にこだわり、大吟醸から普通酒まで全て長野県産米を使用しております。

平成17年~自社田でのひとごこち栽培も開始し、現在、約1町歩 約90俵です。

原料米は全量自社精米による原料管理を行っています。

郷の米、郷の水、郷の杜氏で、名実ともに本来の意味の地酒造りを目指します。

『農・酒・呑・生活(NoSakeNoLife)』をポリシーに農業と深く関わりながら、風土を醸してまいります。

【Challenge】熟成に関する取り組みとして、県営ダムの管理用トンネル・スキー場の雪中貯蔵・ワイン中古樽貯蔵などを行っております。

そのほかに、クラフトジン、スピリッツ、焼酎、梅酒など地場の素材を活かした個性的なアルコール飲料の開発など多彩な酒類製造も特徴です。

酒造りにまつわる体験や展示物を楽しめる空間も多数運営

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

当蔵では、体験型ファンクラブ八千穂美醸会(米作りから酒造りまで)を主宰し、今年で20周年を迎えます。

JR八千穂駅から奥村土牛記念美術館や黒澤家が商いをしていた日本の情緒あふれる蔵の街並みを散策すること5分、酒蔵に隣接する繭蔵だった建物を1990年に改装し、酒の資料館を開館しました。

地域の民族・風土を知ることのできる古民具・農機具などを展示した民族資料室や酒造りの風景を人形で再現したジオラマや昔ながらの酒造りの道具を展示した酒の資料室がございます。

黒澤酒造や日本酒の歴史・地域の文化に触れる事の出来る博物館となっており、10時~17時まで、無料でご覧いただけます。

また、酒蔵ショップ&ギャラリー くろさわは、1858年創業当時の酒蔵を移築・改修復元した蔵造りの酒蔵ショップで、蔵元自慢の酒が勢揃いしています。

試飲サーバーを使用し、6種の有料試飲コーナーもございます。Vintage古酒から季節酒、梅酒、クラフトジンなど多彩な販売ラインナップを有します。

ショップ奥のスペースには地域文化の交流・作品発表の場として広くご利用いただける貸ギャラリーを併設しています。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします!

誇れる風土を語れる酒、一歩進んだ自在な酒造りを目指します。

酒の五味「甘酸辛苦渋」のバランス良いしっかりとした味わいと心地よさを追求しております。特に、お燗をつけた時のその旨さには自信があります。是非お試しください!

今回ご紹介した酒蔵について

黒澤酒造株式会社
https://www.kurosawa.biz/
長野県南佐久郡佐久穂町大字穂積1400番地

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酒蔵プレス編集部

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