地域風土の特性を活かした、唯一無二の酒造り【龍勢】藤井酒造-広島県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第58回目の当記事では、広島県竹原市（ひろしまけんたけはらし）の藤井酒造（ふじいしゅぞう）株式会社を特集します。

「酒は、人が造るものではなく、自然が醸すもの」

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

瀬戸内海沿岸にある、江戸時代の町並みが今も残る風光明媚な町・竹原で創業し、150年を超えております。

「酒は、人が造るものではなく、自然が醸すもの」をコンセプトに、地域の風土を映し出すお酒を目指しています。

造るお酒は全量純米酒で、酵母・乳酸菌無添加の古式生酛、完全発酵を主軸としています。

瀬戸内海の温暖な気候と清冽な地下水に恵まれ、海産物も多く獲れることから、竹原ではお酒とともに独自の豊かな食文化が育まれてきました。

おすすめは、日本で最初の清酒品評会で日本一に輝いた「龍勢」

―代表銘柄は？

創業銘柄でもある「龍勢（りゅうせい）」です。

龍勢は、明治40年（1907）の日本で最初の品評会、「第一回全国清酒品評会」において日本一の栄誉に輝いた銘柄です。

龍勢は、酵母に糖分を食い切らせる完全発酵にこだわっており、米の旨みや甘み、心地よい酸が感じられる、食事に寄り添うお酒です。

冷酒はもちろん、燗にしてその真価を発揮します！

開栓後も日ごと月ごとの味の変化が楽しめる、表情豊かなお酒です。

―イチオシ商品はなんですか？　地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか？

「龍勢 生酛八反陸拾 純米吟醸」です。広島県産の酒造好適米の「八反35号」を伝統的な製法の生酛で仕込んだ、純米酒です。

八反35号のもつ、透明感のある味わいに、生酛由来のふくらみのある酸が融合した、飲みごたえのある味わいで、瀬戸内海産のたこのカルパッチョなどと合わせるのがおすすめです。

酒蔵プレス編集部

酒蔵プレス唎酒師による「龍勢 生酛八反陸拾 純米吟醸」テイスティングノート

●香り
香りは爽やかな乳酸、ホワイトチョコのような甘い香りがします。色味が輝きを放っているような黄金色で、ラベルの色とマッチしています。

●味わい
香りに反して味わいはしっかりとした酸味と奥行きのあるふくよかさを感じます。キレがよく、後味にコハク酸のような酸味と旨味が広がり、料理と合わせるのが楽しみになる味わいです。

●ペアリング
エビとアボカドのサラダ、ハマグリの酒蒸し、アサリのバター焼き、桃のパフェなど前菜からデザートまでフルで合わせることができる、食前酒・食中酒として活躍できる日本酒です。

●総評
味わいが濃厚でありながら、後味はすっきりとしている分、次々と飲んでしまうタイプの日本酒。（噛み続けることのできる濃いおつまみと合われば永久に飲めるかも…）

―酒造りで心がけていることは？

お酒の声に耳を傾け、過度なコントロールをしないこと、伝統に敬意を払いながらも、常にチャレンジし続ける酒造り、です。

映画「吟ずる者たち」を通して知って欲しい、広島酒や竹原市の良さ

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

2021年秋、藤井酒造もロケ地になっている映画「吟ずる者たち」がいよいよ公開となります。
※現在は広島県内で先行上映中

広島吟醸酒の父といわれる、明治時代の醸造家、三浦仙三郎氏の生涯に迫った映画で、主演の比嘉愛未さんも藤井酒造にお越しになり、撮影を行われました。

監督の油谷誠至氏は竹原市のご出身で、弊蔵の藤井善文と小学校の同級生というご縁があります。

映画を見れば、広島酒の素晴らしさに加え、竹原市の魅力も感じられることと思います。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします！

藤井酒造では、自然との対話で醸す酒造りを心掛けています。

龍勢を通じて、瀬戸内のおだやかな気候を感じてください。

今回ご紹介した酒蔵について

藤井酒造株式会社
https://www.fujiishuzou.com/
広島県竹原市本町3-４-１４