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独自の旨さの創造を通して、旨いの先にある幸せをお届け【杜の蔵、独楽蔵】株式会社杜の蔵-福岡県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第44回目の当記事では、 福岡県久留米市(ふくおかけんくるめし)の杜の蔵(もりのくら)を特集します。

粕取り焼酎造りで創業 。 その数年後、今となっては主力となった日本酒造り

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

地元の久留米市三潴町(みずままち)は九州一の河川である筑後川の流域に広がる筑後平野のほぼ中心に位置しています。

全国的にはあまり知られていませんが、福岡県は稲作が盛んなだけでなく、古くからの酒処でもあり、中でも久留米市は13の日本酒蔵が存在するほどです。

江戸~明治期には、酒蔵から出た酒粕を煎じて稲作の肥料に使っていた当地では、その副産物として造られ始めた粕取り焼酎も伝統文化の一つで、実は弊蔵も1898年に粕取り焼酎造りで創業しました。

その数年後からは、今となっては主力となった日本酒造りにも取り組み、現在に至っています。

代表銘柄は?

私どもが醸す日本酒にはほぼ同規模の製造・出荷量となる二つの代表銘柄があります。

一つは社名と同じ「杜の蔵」で、親子4代続く地元杜氏が代々醸してきた正統派の酒質をベースとしたもので、凛とした上品な香味であり、九州の酒らしいなめらかな旨みのあるタイプです。

幅広い層のお客様にご支持いただいています。

もう一つの「独楽蔵(こまぐら)」は日本酒の可能性を広げるとともに、現代の多様な食と一緒に楽しむことを意識したもので、それぞれ目標とする酒質に適した一定の熟成期間をとったお酒です。

飲用温度・酒器・合わせる料理によって楽しみ方が大きく広がるタイプで、日本酒ファン以外にワイン愛好家の評価も高い傾向があります。

いずれも派手なインパクトではなく食卓での自然な味わいを求めたものなので、じっくりと味わっていただくことでその個性が伝わると考えています。

―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?

(二つの銘柄で酒質が大きく異なるので一つだけは選びにくいなか、敢えてというなら…)「独楽蔵 玄 円熟純米吟醸」です。

年間通してだと、おそらく私が最も飲んでいるのがこのお酒だと思います。

初めは前菜等に合わせてすっきり系の冷酒を一杯、その後にこのお酒を常温かお燗で飲むことが多く、料理に合わせて飲み方を変えて楽しみます。

例えば、焼物・煮物ならぬるめのお燗、揚げ物・炒め物には熱めのお燗をいずれも平盃で、乳製品やスパイスを使った料理や肉料理には、大きめのグラスで空気に馴染ませながら常温で、など。地元料理だと「ごまさば」「筑前煮」「豚バラ串」「もつ鍋」「一口餃子」などです。

一杯目には「しぼりたて」「夏酒」「ひやおろし」等の季節のお酒も多いですが、お奨めは「杜の蔵 純米吟醸 翠水(すいすい)」です。

料理の邪魔をしない程度の軽い吟醸香(ぎんじょうか)と優しく軟らかな口当たりで、あっさりめの料理が合わせやすく、地元料理だと「いか活き造り」「明太子」「鶏の水炊き」などです。

食卓で活躍することをより大切に考えた酒質設計

―酒造りではどんなことを心がけていますか?

まずは全ての原料が地元福岡県産ということです。

自社田を含む地元での契約栽培米、蔵の地下を流れる高良山(こうらさん)水系の伏流水(ふくりゅうすい)、代々続く三潴杜氏(みずまとうじ)の技は、弊社が大切にしている地酒の三要素です。(2005年より県産米による純米造り100%)

次に麹の旨みをいかすことです。

日本の伝統食品の多くと深い関わりがある麹は、香味に豊かさを与えてくれます。嗜好の移り変わりへの意識は持ちながらも麹文化は大切にしていきます。そして、鮮度を楽しむお酒だけでなく、適度に熟成させるお酒への挑戦は、日本酒の可能性を広げてくれると信じているだけに、試験を重ねながら今後も続けていきます。

また、自然な味わいも外せないことです。きき酒での評価もさることながら、食卓で活躍することをより大切に考えた酒質設計を大原則においています。

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。

「杜の離れ」

昨年オープンしたばかりの、旧母屋を改築したお客様向けのスペース。

酒造りの様子等が分かるミニ展示室をはじめ、お酒の飲みくらべや買い物のほか、オリジナルスイーツも楽しめ、リピートのお客様も多いです。

(コロナ禍の)状況が安定すればイベントやワークショップ等も検討中です。

「城島酒蔵びらき」

毎年2月に開催される九州最大級の酒イベントで、地域の8酒蔵とメイン会場を無料シャトルバスで巡って楽しめます。

遠方からの来場者も年々増え、近年は10万人を超えるほどの人気です。

※2021年はコロナ禍により代替としてドライブスルーイベントを開催しました。

「筑後川」・「有明海」

古くからの酒処を支えてきた筑後川。そして干満の差が大きく海苔や珍味も豊富な有明海。

なかでもエツは、国内では有明海にのみ生息するカタクチイワシ科の魚で、産卵のため筑後川下流域に遡上(そじょう)*してきます。

希少な魚であるため、漁の解禁期間は5月1日~7月20日です。旬の季節にだけ味わうことが許される貴重な郷土料理は、日本酒との相性も抜群です。

*「遡上」流れをさかのぼって行くさま。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします!

私達は「酒米作り→純米酒造り→酒粕焼酎造り→(焼酎粕の堆肥化)→酒米作り→…」の循環にも取り組んでいます。製造量の一部分ではありますが、以前は地域全体で行われていたことであり、弊社創業の原点ともいえるからです。

日本酒は現代では世界に誇れる酒になってきましたが、まずは造り手である私達が誇りに思えることが一番だと考えます。

”独自の旨さの創造を通して、旨いの先にある幸せをお届けしたい”との理念を大切に、今後もまずは私達自身が飲みたいお酒を醸すことに全力を傾けていきたいと思っています。

今回ご紹介の酒蔵について

【福岡県】
株式会社 杜の蔵
http://www.morinokura.co.jp/
福岡県久留米市三潴町玉満2773

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酒蔵プレス編集部

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