地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第65回目の当記事では、兵庫県赤穂市(ひょうごけんあこうし)の奥藤商事(おくとうしょうじ)株式会社を特集します。
江戸時代には赤穂藩の御用酒屋もつとめた歴史ある酒蔵
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
播州赤穂といえば、赤穂浪士が主君の仇討ちをした「忠臣蔵」。奥藤醸は創業慶長6年(1601)。奥藤家は、代々廻船業で栄えた坂越(さこし)の大庄屋で、江戸時代には赤穂藩の御用酒屋もつとめた歴史ある酒蔵です。
いまも酒蔵を中心に、落ち着いた旧来のたたずまいを色濃く残しています。
清流千種川の水と、播州の米どころという豊かな風土に恵まれて、当時のままの小さい地酒蔵を守って現在に至ります。
仕込蔵は地形を利用した石垣の上に立てられた半地下式の建物。石高は少なくとも納得のいく酒質の酒を造り続けることが大切だと考えています。
―代表銘柄は?
弊社の銘柄は「忠臣蔵」、主に地元向けの商品として「乙女」があります。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
イチオシは「忠臣蔵 純米吟醸」です。
9号系酵母を使い、程よく厚みのある吟醸香となめらかで、柔らかくまったりとした旨味を楽しめます。
瀬戸内海の海の幸にとても良く合います。お刺身、煮つけ、穴子の白焼きなど。新酒が出来上がる冬には特産品の牡蠣がとれますので、焼き牡蠣などもおすすめです。
酒蔵プレス唎酒師による「忠臣蔵 純米吟醸」テイスティングノート
●香り
アルコール感が際立ち、香りは控えめですが吟醸香も感じられ、爽やかなイメージが持てます。
●味わい
綺麗なアルコール感が舌へダイレクトに伝わり、非常にすっきりとした味わいです。鼻抜けに爽やかさと吟醸香を感じ、飲みやすい日本酒です。
●ペアリング
鴨のパストラミの脂身と胡椒の風味をすっきりとしたアルコールが口中を抜けることで、旨味の幅を広げてくれます。脂身や胡椒の風味などが強いものとの好相性です。
●総評
日本酒のアルコール感が主張されつつも、とにかく爽やかで旨い。燗をつけると甘みが現れ、ほろよいするにはもってこいの日本酒です。
精冽にして味の堅固なしっかりした酒
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
原料となる酒米は、地元兵庫県で収穫された良質な山田錦、兵庫夢錦を使用しています。
手間暇かけて造る奥深い味わいの山廃、生酛系の純米酒から、低温でじっくりと醸した華やかな香りが特徴の吟醸系まで手掛けています。
目標は精冽にして味の堅固なしっかりした酒。原料処理に細心の注意をはらい、温度管理に心を尽くして醪(もろみ)を育て、タイミングを逃さず搾ります。
よい酒は、心づくしと、的確な判断のたまものです。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
兵庫県南西部に位置する播磨では、酒造好適米「山田錦」発祥の地である播磨地域の酒の認知度を高めようと、2020年より地理的表示「GIはりま」が指定されました。
弊社では、山田錦を使用した商品のうち、大吟醸、純米吟醸47の2商品があります。
観光面では、酒蔵周辺の歴史情緒あふれる坂越の町並みにここ最近、古民家を利用して人気の映えスイーツ店をはじめ、ランチを楽しめるカフェや雑貨屋さんがオープンし、県内外から観光客の訪れる注目のスポットとなっています。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
弊社は製造量は約200石程度と地元での消費がメインで現在は出荷量も少ないですが、これからもっと増やせるようにがんばっていきたいですし、日本中の多くの人にうちの酒を「赤穂の酒」として楽しんでもらえるように、酒蔵を守っていきたいと思っています。
赤穂市へ観光に訪れる機会がありましたら、試飲、販売も行っていますので、是非お立ち寄りください。
今回ご紹介した酒蔵について
【兵庫県】
奥藤商事株式会社
兵庫県赤穂市坂越1419-1
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