地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第92回目の当記事では、長野県飯山市(ながのけんいいやまし)の株式会社田中屋酒造店(たなかやしゅぞうてん)を特集します。
天然水を運び仕込水として使う
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
明治6年創業。甲斐武田家の末裔、武田貢一が田中家に養子に来た時より酒造業を創業しました。より良い酒質を目指し、平成4年に野沢温泉村「水尾山(みずおさん)」の天然水を運び仕込水として使い始め、現在のブランド「水尾」が立ち上がりました。
日本有数の豪雪地帯であり、地域には野沢温泉スキー場をはじめ、数々のスキー場を有しています。米処としても有名で、毎年開かれる米の食味コンテストでは多数の農家が優秀賞となっています。
―代表銘柄は?
- 代表銘柄「水尾(みずお)」
野沢温泉村「水尾山(みずおさん)」の天然水を年間に150回以上運搬し仕込み水に使用しています。
柔らかくなめらかな水質が酒質にも反映され、柔らかく後切れの良い酒となります。
酒米には長野県開発の「金紋錦」、「ひとごこち」を使い、100%が蔵から5㎞圏内で栽培される契約米を使っています。
ナチュラルな香りと旨味を伴うキレの良さが持ち味です。上質な普段着のような食中酒をメインとしています。
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
- 「水尾 特別純米酒 金紋錦仕込」
長野県では最高ブランドの酒造好適米である、木島平産「金紋錦」を100%使用した特別純米酒です。
さわやかでナチュラルな香りと程よい旨味、後切れの良さを持つ水尾の代表酒です。
10℃~15℃位の冷やがお薦めで、お燗なら40℃位が良いです。
野沢菜の本漬け、タラの芽など山菜の天ぷら、ヤキトリなど「苦さの旨味」がある食材と良く合います。
蒸米の手触り、麹の感触・香り、醪の状貌など人の感覚を大事に
―酒造りではどんなことを心がけていますか?
良い水を使い、良い米を使い、そして基本に忠実な良い造りをする、その「あたりまえ」を大事にしています。
新しい技術を取り入れながらも、伝統的な製法を大事に考え、ナチュラルな香り、旨味ある味わい、後味のキレの良さなど、地域の好みを反映する味の形を造るよう心がけています。分析数値よりも、蒸米の手触り、麹の感触・香り、醪の状貌など人の感覚を大事にした、きめの細かい管理で酒造りを行います。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
コロナでなければ、スキー観光を中心にインバウンドの来客が多い地域であり、北陸新幹線・飯山駅を起点として、首都東京から最も迅速にアクセスできるビックスノーリゾートのひとつです。
信越トレイルなどグリーンツーリズムの発信地でもあり、スイーツも含め知る人ぞ知る小振りな食の名店が多く、それは米や野菜などの基本食材のうまさからくる地元評価の厳しさに起因していると考えています。もちろん県内での日本酒の評価もとても高い地域です。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
今流行りの「甘く華やかな吟醸酒」とは一線を画した、古くから伝わる地元嗜好の味わいの良さ、地元では「あたりまえ」である良さを、多くの人に理解してもらいたいという気持ちで酒造りに取り組んでいます。
温故知新の思想で取り組むそんな個性こそが、おそらく世界に通用する日本酒であると、ワイン文化のインバウンドの評価を見て実感しています。
まずはぜひ一度「水尾」の味わいを、特に食と合わせて楽しんでいただければと思います。
今回ご紹介した酒蔵について
【長野県】
株式会社田中屋酒造店
https://www.mizuo.co.jp/
長野県飯山市大字飯山2227
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