創業370年、日本で最も星に近い酒蔵【木曽路、十六代九郎右衛門】湯川酒造店-長野県

地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第71回目の当記事では、長野県木曽郡（ながのけんきそぐん）の株式会社湯川酒造店（ゆかわしゅぞうてん）を特集します。

米が取れない地域でありながら流通していた米で酒造りを行なう

―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。

創業1650年。中山道木曽街道（木曽路）薮原宿で酒造業を始め、16代目の今に至ります。豊富な木材を糧に経済発展してきた木曽地域は、米が獲れない地域でありながら多くの米が流通しており、その米を利用して酒造りを行っておりました。醸した酒は街道を行き交う人々が口にしただけでなく、街道の流通網により広く販売されていました。

蔵は標高936mに立地。決して酒造りに最適とは言い切れない環境ながら、ここ木祖村（きそむら）でこそ培われてきた寒さに強い酒造技術により、たくましくも優しさあふれる酒を醸しています。

―代表銘柄は？

木曽路：木曽路の時代（とき）とともに、今までも、これからも。
地元の人々に愛される銘柄であることを第一に、普通酒から純米大吟醸までを製造。米の甘味を活かした厚みのある味わいの上に、食事に寄り添う安心感や季節に応じたワクワク感など、商品ごとに表現しています。

十六代九郎右衛門：造り手の感性とともに、記憶に残る酒を。
米の旨味や酸味、余韻の軽快さなど、メリハリある味わいをベースに、造り手が楽しい、あるいはチャレンジしたいことを表現しています。生酛・山廃・酵母無添加・低アル原酒等、様々な醸造技術を駆使して、湯川にしかない味わいを醸します。

そばや酒を地元の空気感や季節の料理と共に味わってほしい

―イチオシ商品はなんですか？　地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか？

木曽路：そばを食す前にお召し上がりいただくのが最高です！できればこちらに来て、地元の空気感や季節の料理とともに味わっていただきたいです。

十六代九郎右衛門：酒そのものを楽しんでほしい！というのが本音です。料理との相性も、お客様が思うように楽しんで頂ければ幸いです。

全員が作り手としての意識を持ち、更なる品質向上を目指す

―酒造りで心がけていることは？

大前提として、社員全員が「造り手」であるという意識をしっかり持つことです。それにより、出荷までのすべての工程において品質優位な選択ができるようになると考えています。

発酵中の醪やしぼった酒にできるだけ負荷をかけないことを重視しています。特にしぼって以降瓶詰までの工程において、空気に触れるタイミングを最小限に抑えることを意識しています。

そのために、上槽即時（ろ過）瓶詰めを行ったり、蔵の立地を活かしたグラビティフローなど、工程削減による品質向上を目指しています。

更に、木曽の冷涼な気候環境を活かした自然温度帯での熟成に移行するために現在貯蔵庫の建築を計画中です。

―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。　

木曽の自然や歴史を感じる街道歩きがおすすめです。夏は奥木曽湖でのアクティビティ、冬はスキーなども楽しめます。薮原宿ではここ数年アートと共存する街づくりが行われており、各地からアーティストが集ってイベントも開催されています。当社はアーティストのデザインラベルでの商品発売でコラボレーションしています。

―最後に、読者へのメッセージをお願いします！

湯川酒造店の商品を通じて、木祖村や木曽地域のことを知るきっかけになるなど、地域の発見や、こんな日本酒ステキ！という味わいの発見など、新しい出会いがあれば幸いです。

私たちは、木祖村でしかできない酒造りをしっかりと追及し続け、未来につなげていきたいと考えています。

今回ご紹介した酒蔵について

【長野県】
株式会社湯川酒造店
https://yukawabrewery.com/
長野県木曽郡木祖村薮原1003-1