地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第67回目の当記事では、岐阜県揖斐郡(ぎふけんいびぐん)の所酒造(ところしゅぞう)合資会社を特集します。
明治初頭に創業、約30年前からは社員による小仕込みの酒造りを行う
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
創業は、明治初頭で、製造石数約200石です。
岐阜県の三大河川の一つ「揖斐川(いびがわ)」最上流の小さな酒蔵で、現在は5代目蔵元が製造責任者を務めています。
濃尾平野の西北端に位置し、夏は鮎を捕る「やな漁」が盛んで、お茶や山菜も地元揖斐川町の特産品です。
弊社は30年程前から社員による酒造りを始め、10月~5月の間、総米量500kg~800kgの小仕込みで酒造りを行っており、純米酒比率は80%です。
―代表銘柄は?
代表銘柄は「房島屋(ぼうじまや)」で、1999年に実家に戻った現蔵元が、タンク1本からスタートさせました。
立ち上げ当初より「酸」と「旨味」に着目し、お燗にして美味しいこと・熟成させても美味しいこと・料理と合わせることでより美味しく飲めることを三大テーマに酒造りを行ってきました。
房島屋ブランドは売上の約8割を占め、他には「桜千代の春」「揖斐の蔵」などの地元銘柄があります。
現在は、定番酒と季節商品を合わせて、年間で15種類以上の少量多品種生産を行っています。
45℃で米の旨味と酸味を感じられる「房島屋 純米超辛口おりがらみ」
―イチオシ商品はなんですか? 地元の食材・料理とはどんな合わせ方がおいしいですか?
いちおし商品は「房島屋 純米超辛口おりがらみ」で、この商品は、日本酒度+10の辛口の純米酒で、旨味を出すために、おりをからめたうすにごりの純米無ろ過生原酒です。
10℃くらいでももちろん美味しいですが、45℃くらいのぬる燗にすると米の旨味と酸味をより感じることができます。
肉料理との相性が抜群ですので、地元産のポークジャーキーやジビエ料理と合わせると心地よい酸味がお肉の脂を流してくれます。
微発泡性の「兎心BLACK」シリーズもピザやエビフライと合わせるなど面白いペアリングができてオススメです。
酒蔵プレス唎酒師による「房島屋 純米無ろ過生原酒」テイスティングノート
●香り
無濾過のふくよかさとパンチ力を残しつつ、生酒のフレッシュ感があり、吟醸香も感じる非常に心地よい香りです。
●味わい
甘みと旨味のバランス、喉越しの強さが気持ちいいくらいふわっと広がります。深くて濃い味わいが喉に残り、料理と合わせたら最高です。
●ペアリング
唐揚げなどの濃い味わいとマッチし、アルコールが鶏の脂を流してくれます。喉に残る濃い味わいも一緒に流れ、胃の中が幸せになりそうです。
●総評
旨味が乗った純米無ろ過生原酒。お酒だけで飲んでもいいですが、これは料理と合わせることでより日本酒の良さを感じることができます。お酒だけなら玄人向きですが、料理と合わせることで幅広い方たちに日本酒の魅力を知っていただくにはもってこいの一本です。
―酒造りで心がけていることは?
基本に忠実にていねいな酒造りを心がけています。
その上で、商品のコンセプトに合わせた酒質設計を行っています。
例えば、無ろ過生原酒でも「兎心BLACK」シリーズはフレッシュさを出すために、しぼった当日か翌日に瓶詰するのに対し、「純米無ろ過生原酒」では落ち着いた味わいを出すためにあえてタンクで生熟成してから瓶詰します。
一律にマニュアル化するのではなく、商品ごとに製造方法をきめ細かく調整しています。
いびがわマラソン完走後にふるまわれる新酒の1杯は最高
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
マラソンをしている方はご存知なのですが、「いびがわマラソン」というフルとハーフ合わせて1万人が参加するマラソン大会があります。
2020年と2021年はコロナ渦で中止になっていますが、例年11月に開催され、人口2万人の町に応援者を含めて3万人以上がやってきます。
地元特産品コーナーもあり、例年皆さんに新酒を試飲していただいているのですが、完走した後の1杯が最高のようです。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします!
現在は多種多様な日本酒造りが各地で行われており、日本酒の「美味しさ」の定義も造り手がそれぞれ真剣に考える時代になってきました。
トレンドをうまく取り入れながら、自分たちが本当に美味しいと思える日本酒をぶれずにお客様にお届けしたいと思っています。
当酒蔵でしかできない味わいを目指して今後も酒造りに励みたいと思います。
今回ご紹介した酒蔵について
【岐阜県】
所酒造合資会社
岐阜県揖斐郡揖斐川町三輪537-1
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