地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。第275回目の当記事では、三重県四日市市(よっかいちし)の伊藤酒造(いとうしゅぞう)を特集します。
伝統を守り、テロワールを追求する三重の名酒『鈿女』
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
1847年に初代伊藤幸右衛門が創業。戦前は「伊勢櫻」の銘柄で好評を博しましたが、戦時中にやむなく廃業。戦後復活し、技術屋の4代目が早期に吟醸酒を製造し全国新酒鑑評会で金賞を受賞。「鈿女」と名付けられた美酒は三重の吟醸酒の走りとなりました。
その後吟醸酒が主流になった昨今、酒質を飲みやすい酒から米の旨味を感じる濃味な酒に転換。大切な米は酒蔵から12マイル以内の圃場で栽培するなど、テロワールを意識した酒造りを行っています。
―代表銘柄は?
「鈿女uzume」
神々の酒宴に華を添えた笑いと和みの女神「アメノウズメ」に由来しています。
酒質は「飲みやすい酒」より「味わいある酒」を指向しており、濃厚甘口、超辛旨口、シャンパン製法で作ったスパークリングなど多彩なタイプに挑戦し高評価を得ています。
―イチオシ商品はなんですか?
「鈿女 Relaxation」
穏やかな吟醸香、柔らかな米の甘みが口中に広がり、後味の酸味と絶妙に調和します。甘みと酸味の強さ(Level)が異なる3つのタイプがあります。
お薦めの飲み方:10℃くらいに冷やして冷酒で、ワイングラスがお薦めです。
地元料理との合わせ方:鮮魚に合わせるというよりは、広東料理、デミグラスソース、ホワイトクリーム、ブルーチーズ、アヒージョなど、従来の日本酒が苦手とする料理によく合います。
伝統技法で醸す個性豊かな日本酒の魅力
―酒造りで心がけていることは?
伝統的技法を踏襲した熟練杜氏が、近代的な設備を使わない昔ながらの自然にあわせた酒造りで米の個性を引き出した味わい深い酒を醸しています。
稲を育て、日本酒を仕込む過程に携わる様々な人たち。
この「作り手たちの個性やその年の自然環境」から、年度やタンクごとに生まれる酒質の差も日本酒の面白みと考えており、この楽しみも届けたいと思っています。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
やはり三重といえば伊勢神宮。おそらく 日本一のパワースポットではないでしょうか。
三重は、松坂牛、伊勢エビやアワビなど水産品、お茶、お米、そしてお酒と美味しい食材がいっぱいです。是時お立ち寄りください。
―読者へのメッセージをお願いします。
弊社では、お客様のニーズに合わせたいろいろな蔵見学コースをご用意しております。直営販売店も営業中です。是非お立ち寄り下さい。
また、年に数回の体験酒造り会を開催しています。2024年夏頃から蔵元のオンラインサロンをスタートします。ご興味のある方は是非ご参加ください。
今回ご紹介した酒蔵について
【三重県】
伊藤酒造株式会社
三重県四日市市桜町110番地
https://www.suzukasanroku.com/